社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

社会保障②。

「公的医療保険の概要について説明しなさい。」

B評価。

 

公的年金制度同様、日本の公的医療保険制度は、「国民皆保険」の理念の下成り立っている。諸外国の保険制度と比較しながら日本の特徴を見ていくと、アメリカでは、メディケアやメディケイドなどの貧困層向けの公的制度もわずかながら機能しているものの、医療は商品として提供されるべきであるという市場理念の下、民間の医療保険会社中心の「私費診療方式」で成り立っている。営利を追求する企業と医療が必要な利用者との間での様々な問題も指摘されるが、いかにも自由経済主義のアメリカらしい方式である。

一方イギリスやスウェーデンデンマークでは、医療は全て公費で賄われるべきとされ、税を財源とした原則無料でサービスを受けられる「国民保険サービス方式」で運営されている。もちろんその分、各税率は日本とは比べ物にならない程高率である事や、病院が非常に混雑し、早急な対応が難しい、医療環境の劣悪性などの問題点も見受けられる。

ドイツやフランスなどの国々では、日本同様、「社会保険方式」が採用されている。政府が運営主体の強制保険である事、被保険者本人とその使用者の拠出、さらに国庫負担も加えられた三者拠出制である事、医療サービスを無料または軽減された利用料で受けられる事がこの方式の特徴として挙げられる。中でも日本は、使用者の負担割合よりも、被保険者本人の負担が相対的に高い事、医療サービスを受けるにあたって、原則三割の負担が求められる事など、比較的本人負担に頼った制度と言える。

次に、日本の制度の概要を見ていくと、被用者と被扶養者を対象とした被用者保険(民間企業に勤務する被用者を対象とした健康保険制度と、公務員等を対象とした共済組合制度に大別)、労働者の業務上の傷病を対象とした労働者災害補償保険、上記被用者保険適用外の地域住民全てを対象とした国民健康保険、高齢者を対象とした前期・後期高齢者医療制度などが挙げられる。

現在叫ばれている問題点は、このシステムの財政破綻であり、毎年1兆円程度増加する医療費を2200億円削減しようと努力がなされている。しかし、この努力の方向は正しいのであろうか。冒頭で比較したイギリスでは、現状すでに高税率負担であるにも関わらず、問題点を打破すべくさらなる医療費増額で改革中である。先に「日本は三割負担であるが故、本人負担に頼った制度」と述べたが、個々人で見れば確かに負担は三割だが、高額療養費制度により国民全体の負担は15%程度に抑えられている。健康な人は医療が必要な人を支え、医療費の軽い人が、高額な医療を必要とする人を支える。社会保険の確かな姿であり、「社会保障」と言えるだろう。超高齢少子化が進み、経済も低迷している日本において、保険制度の維持、医療技術の進歩を支えていく為には、国民一人ひとりが税を通じて責任を果たしていくべきではないだろうか。