社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

福祉サービスの組織と経営

「福祉サービスの質の評価システムが導入された経緯と背景、目的と課題について論じなさい」

 

A評価。

 

近年の利用者の福祉ニーズの多様化や一般化、またそれに伴う様々な福祉改革を通じて、福祉をサービスとして提供する事は、もはや当たり前になったと言える。3年程前にこの業界に飛び込んだ私にとっては、何の違和感もなくサービスであると認識しており、テキストや各種文献の中で、改めて謳われているのを見る方が違和感を覚える程である。

サービスが提供されれば、「質」という価値が発生する。よい質を求め、利用者は情報収集し、比較検討を行い、選択する。しかし、世間一般のサービスとは異なり、以前の福祉サービスは、施設の文書などサービス内容に関する客観的な情報はほぼ皆無であり、口コミや評判など主観的な情報に頼る他なかった。

このような利用者の動向を受けながら、介護保険制度や社会福祉法の施行、支援費制度の導入など、法制度も措置から契約へ転換していく中で、サービス内容に関する情報公開、客観的なサービスの質の評価制度の導入、サービス利用者の権利擁護が強く提言された。

この客観的な評価を行うツールが第三者評価である。平成11年に取りまとめられた「福祉サービスの質の向上に関する基本方針」に基づき、第三者評価事業は「評価基準」「手順及び方法」「評価機関の要件」「評価者の資質及び研修の在り方」について検討され、13年に「福祉サービスにおける第三者評価事業に関する報告書」として取りまとめられた。

前述の通り、第三者評価の目的は、利用者へ有益な情報を公開し、検討材料を提供する事がひとつだが、もうひとつの目的として、サービスの質の向上がある。利用者の権利擁護や自立支援はもちろん、家族や地域など福祉ネットワーク化、あるいは施設のより良い環境の整備など様々なサービスが求められる中で、そこで働く職員の人材育成はもちろん、施設の運営や管理など色々な観点から質の向上を目指す必要がある。その為には、職員の業務内容や役割、組織の課題の洗い出しなど常にチェックしなければならないが、日々の業務に追われながらでは不十分であるし、何より客観的に判断する事が難しい。それを賄う上でも第三者評価は非常に有効である。私はこちらが第一次目的であり、その結果として二次的に利用者の情報源となると考える。

一定の評価基準は設けられているものの、機関によって基準は異なっており、利用者の比較検討の良い材料になっているとは決して言えないのが現状である。全国規模での基準の標準化が大きな課題と言える。また、地域においては受審する施設や事業所がまだまだ少ないのも大きな問題だ。「利用者の判断材料」という言い方は、「利用者が逃げてしまうのではないか」というネガティブな印象ばかり与えかねない。評価システムのもうひとつの目的である「サービスの質の向上」を前面に出し、「新規利用者を獲得できるかもしれない」というポジティブな思考へと導く事で、受審拡大の第一歩にはならないだろうか。