社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

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権利擁護と成年後見制度

民法上、成年後見人はどのような人を対象にして、いかなる権利が与えられ、またどのような意義が課されているか、具体例をもとにして説明しなさい」

 

B評価。

 

成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度の2がある。任意後見制度は、充分な判断能力のある内に活用する制度であり、将来への不安に対して、後見人から支援の内容に至るまで自身で決めておく事が出来る。一方、法定後見制度の対象者は、既に判断能力が不十分な方が対象であり、民法上、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人」とされている。本人の判断能力の程度に応じて、補助類型、補佐類型、後見類型のいずれかを選択して利用する事となる。

本稿では、中でも、判断能力が非常に減退した方を対象とした後見類型を想定し、成年後見人の権利や義務を見ていく事とする。

成年後見人には、「財産管理権」という権限が付与される。財産を充分な判断力の下で管理する事が出来ない成年被後見人に代わり、財産を維持管理する権限である。これに付随して、「代理権」「取消権」も付与される。代理権とは、成年被後見人の財産に関わる全ての行為を成年後見人が行う事である。例えば、成年被後見人が不動産を購入しようとする場合、成年後見人が代理で購入手続きを行える事がこれにあたる。また、財産だけでなく、本人に必要と思われる生活や療養に関する全ても代理する事が出来る。取消権では、成年被後見人が単独で行った(成年後見人を介さず行った)行為は全て取り消す事が出来ると認められている。前述の例で言えば、成年後見人の知らない所で、不動産契約が成されたとしても、これを取消す事が出来る。しかし、成年後見制度の理念として掲げられている、ノーマライゼーション、自己決定の尊重、残存能力の活用などの視点から、食料品やトイレットペーパーなどの日用品の購入や、家賃や光熱費の支払い、孫への小遣いなど、その他日常生活に関する行為(この行為の解釈は、成年被後見人の生活水準や資産状況によって判断基準は分かれる)については、取り消す事は出来ないとされている。

成年後見人にとって、財産管理は包括的に任される非常に重要な職務であると言える。重要であるが故、選任されたら1ヶ月以内に、財産を調査し、財産目録を作成し、生活費や療養額などを考慮した上での、財産管理予定を立てなければならないとされている。また、後見の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、後見事務を処理しなければならないという善管注意義務や、成年被後見人の意思を尊重する意思尊重義務、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮しなければならない身上配慮義務、さらには職務内容を定期的に家庭裁判所に報告する義務もある。

成年後見制度の現状を見ると、財産を管理するだけの、消費者被害救済の為だけの制度に感じてしまう。理念にもう一度立ち返り、財産管理は被後見人を支援する1つの手段であるという事を認識し、成年後見制度とは誰もが自分らしい生活を送る為にある制度だと言う事を改めて考えるべきではないだろうか。

参考文献:ガイドブック成年後見制度

監修:成年後見センター・リーガルサポート

著:清水敏晶

出版:法学書院