社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

相談援助演習④

「<課題別の相談援助事例>社会的排除 虐待 DV等(自分が経験した事例を選択)」

 

A評価。

 

ある知的障害のある方の利用が始まった。その方(仮にAさんとする)は40代で、これまでにいくつか就労経験のある方だが、私の施設は、就労関連事業はなく、また授産施設でもない。何故Aさんのような就労経験のある方が利用する事になったのだろうか。

Aさんは若い頃より、軽作業を転々としていたが、どれも正規雇用ではなく、口約束程度で雇用されており、法外な低賃金であった。Aさんの金銭感覚は乏しく、賃金についての不満は無かったようであるが、上司や先輩からの些細な注意に耐えられず、どれも長くは続かなかった。住居は人目の届かない山中で家族と同居しており、近隣住民は全くいない。洗濯や洗体、排泄などは近くの川で行うなど、文化的な生活を送っているとは言えない状況であった。Aさんが誤って山に火を点けてしまった事でAさん一家の状況が明るみに出た。

Aさんが当施設を利用している理由は、Aさんの支援計画によるものではなく、Aさん家族の支援計画が優先されたからではないだろうか。家族には山火事騒動後、Aさんに日中、活動する場を提供して欲しいというニーズがあった。それを受けた市町村が当施設を勧めたという。では、Aさんのニーズはどこへ行ってしまったのか。活動の中でAさんは園芸作業を好み、一生懸命行っている。十分就労に通用するように感じるし、正規ではないとは言え、就労経験もある。このパワーを活かさずして、支援とは言えないのではないか。その後のモニタリングを経ても、Aさんへの支援計画は変わらず、いまだ生活訓練事業の利用者として当施設に通っている。

Aさんのニーズを改めて把握し直せば、次のような支援展開が考えられるのではないか。

目標を、「就労し文化的で自立した生活を送る」と掲げ、就労からグループホームへの入居を目指す。就労支援を担う機関や組織に働きかけ、利用するサービスを見直す事から始まり、生活支援センターやハローワーク、地域障害者職業センターなどと連携した就労先の検討、また就労支援サービスの利用も視野に入れる。次に「文化的で自立した生活」を送る為、やはり現在の住居環境では不十分と考え、グループホームや生活寮、生活支援センターなど、生活支援を担う組織や機関に働きかけていく。

この事例は、家族と本人のニーズの不一致により生まれた、互いの支援計画の溝。言わば、支援計画間の狭間の被害事例である。他にも、就労可能な能力があるにも関わらず、施設の都合で就労支援に移行出来ない方、就労する気がない、もしくは就労出来る程の能力がないにも関わらず、障害程度区分の要件を満たさない為、就労事業を選択しなければならない方など、自分に適した十分なサービスのない、制度間の狭間の被害者も多い。障害やニーズが多様になる一方で、それに応じるだけの諸制度の改革や整備、施設など受け皿の準備が間に合っていないと感じる。