社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

精神保健福祉の理論と相談援助の展開③

そもそものリハビリテーションという概念は第一次世界大戦後、戦傷者の職業復帰を目指しアメリカで生まれたもので、第二次世界大戦下になると、戦傷者だけに限らず徐々に障害者へも対象が拡大されていった。リハビリテーションと聞くと、一般的には医学的な身体機能の回復訓練のイメージが強いが、本来の意味は、医学面だけでなく、職業面、教育面、社会面を含めた4つの分野から全人間的復権を目指すものである。全人間的復権とは、単にADLの自立や経済的自立が優先されるのではなく、QOLを最大限に高めることであり、リハビリテーションにおける理念は、自立観の転換にも大いに影響している。

第二次世界大戦下に本格化した精神障害者に対するリハビリテーションは、世界的に病院内から地域へと活動の場を移し、精神障害者の入院患者数を大きく減少させていった。しかし、精神障害者を医療と保護の対象とし続けていた日本は大きく遅れをとっており、1995年の精神保健福祉法成立まで地域でのトータルリハビリテーションは発展してこなかったと言える。現在でも、精神障害者が病院から退院し、就労することによる「社会復帰」のみを目的としている一面もあり、改めて「全人間的復権」というリハビリテーション本来の意味を考えていかなければならない。

精神障害者の「疾病と障害の併存」という特性を保健医療と福祉の両面にまたがる専門性で対応する精神保健福祉士には、精神科リハビリテーションにおいて相談援助はもちろん、日常生活への適応訓練も求められる。ここで言う訓練とは、社会復帰を円滑に進めるための日常技能の訓練を指しており、作業療法職業訓練とは異なるものである。対象者自身の生活ニーズや方向を尊重し、地域においての生活のしづらさを具体的に支援し、訓練を協働していくことが重要である。

精神保健福祉士のもうひとつの役割に連携が挙げられる。精神障害者が地域社会において最適の自立レベルで適応することの促進を目的とした精神科リハビリテーションは、疾患に対する治療分野と、生活ニーズに対する社会福祉分野とを総合的に実施していくことが求められ、それらを有意義に機能させるために、各分野の専門職との連携が重要になる。様々な機関との連絡調整を行い、活用可能な社会資源を動員することはもちろん、保健医療の専門職として、医療チームとの潤滑油的な連携を行うことも重要である。精神科リハビリテーションは多くの専門職が関わるチームアプローチとなることが多いが、これを円滑に進めるべく、チームメンバーの共通の価値観、目標を常に確認調整するといった、実質的なコーディネーションの役割が大いに期待されている。チームのコーディネーターとして、対象者本人の参加を大切にし、利用者本位の姿勢を忘れず、世話型ではない、協働・提案型の援助を展開していかなければならない。

参考文献

改訂新版・精神保健福祉士養成セミナー

5精神保健福祉におけるリハビリテーション

編集:新版・精神保健福祉士養成セミナー

   編集委員会

出版:へるす出版