社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

相談援助の理論と方法①

ソーシャルワークにおける「医学モデル」と「生活モデル」について、事例をあげて論じなさい」

A評価。

 

私は知的障害者入所支援施設で支援員として働いているが、一年程前に、まさに「医学モデル」と「生活モデル」の視点、それぞれに立ち、痛くその大切さを実感させられた事例があった。これから挙げる事例は、当施設が増築に伴い、これまで生活していた場所から移動する事となった際の事例である。

この事例の利用者は、最重度の知的障害を有しており、他動、破壊、弄便、異食等、生活していくにあたり支援を要する行動が多々あった。新しい生活空間において予測された危険箇所や破壊懸念箇所は、多少予想を上回る事もあったものの、あらかじめの予防策で対応することはできていた。しかし、環境が大きく変化した事で、我々も予測しきれなかった行動が現れた。窓から外へ出て屋根へ登るという危険行為である。

その行為は頻繁に繰り返され、遂には、窓を開放する事もできなくなり、その利用者と職員が常に一対一で行動し支援するしかない状況となった。

一対一での支援を行えば、もちろん危険行為は喰い止められるが、他利用者への支援が薄くなってしまう。生活支援での限界を感じ始めた我々現場の支援員は、看護師、保護者を交え医療相談へと踏み切ることとなった。保護者からの一番のニーズは、「転落における事故、最悪は転落死を絶対に防ぎたい」というものであった。結果、行動抑制を目的とした安定剤の増量、職員の少ない夜間の他動を防ぐ為の睡眠剤が導入される事となった。

これは、問題行動を「取り除いて治療」しようとする、利用者を「患者」として捉えたまさに医学モデルであったと私は振り返る。

服薬変更直後より、危険行為は激減する。当然である。本利用者のA       D       Lは著しく低下し、これまで自立していた移動や食事、排泄にも支援を要する事態となっていた。医療面から見れば保護者のニーズを全うした適確な支援なのかもしれない。

しかし、これで良いわけがない。QOLの向上が福祉の核のひとつであるはずである。現場の支援員達で出来る医療面以外での支援方法を徹底的に話し合った。一対一で支援できる、支援しなければならない時間帯の洗い出し、窓の施錠方法と換気の時間、日中の活動内容、夜間の支援方法など、統一を図っていった。本利用者の生活パターンに基づいて支援方法を探った、まさに生活モデル視点での支援と言えるのではないだろうか。

処方は以前同様まで減薬された。半年程経過するが、今のところ危険行為は起きていない。本利用者が環境に慣れてきたという事もあるであろうが、支援によって本利用者が適応できる環境を作る事が出来たとも思いたい。

以上が私が実際に経験した事例である。私は「医学モデル」を否定する気は全くない。この事例のように、安易に医学モデルで解決しようとした事を反省したいのである。