社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

相談援助演習⑤

「<地域福祉の基盤整備と開発に係る事例>(自分が経験した事例を選択)」

 

B評価。

 

地域福祉という言葉を聞くと、地域の住民皆が互いに支えあう姿が目に浮かぶ。もちろん、この姿は地域福祉の目指すものには違いないのだが、隣人との心の距離が離れ、地域性が希薄になっている今日の日本においては、かなり難しい事のように感じる。そのような中でも、テキストや書籍などの事例を見てみると、住民全体とは言わずとも、少なからず地域の方々を巻き込んだ福祉が展開されている。しかしここで参加している住民とは、何らかの形で福祉や行政に接点のある方々だけではないだろうか。実際、私は数年前まで一般企業に勤めていたが、福祉業界に転職して初めて、地域の福祉サービスやボランティア、地域福祉計画の存在を知った。家族や親しい人間に福祉サービスを利用している方がいない限り、転職前の私のように、福祉に関して完全に他人事であると考えている人が大半であると思う。福祉との接点のない住民までをも巻き込んだ本当の意味での地域福祉を展開していくにはどうすれば良いのだろうか。地域福祉の課題はこれに尽きると私は考る。

このような考えを持つ私だが、悲観しているわけでもなく、消極的なわけでもない。私なりに出来る事を行い、地域福祉へと展開させていった事例を挙げたい。

私は、障害者支援施設で支援員として働いている。それぞれ利用者の個別支援計画に沿いながら、野菜や花の栽培、竹細工、絵画、壁面の作成などを行っている。ここで栽培・製作された物は、施設前の簡易販売所や施設の行事などで販売・展示されているのだが、このような閉ざされた場所のみではもったいないと私は考え、町の協力の下、公民館や図書館、児童館などに展示スペースを確保し、年間通じて作品展示が出来るシステムを構築した。作品は利用者をいくつかのグループに分け、グループ持ち回りで交代で行う事で全ての利用者が参加出来るよう配慮した。これにより作られたネットワークは、秋の町主催の大規模なお祭りに、野菜や花の販売、野菜で作った料理の出店、ステージ発表など様々な形での参加をもたらす事となった。

地域福祉の第一歩は、「社会参加」であると考える。ノーマライゼーションの理念の通り、障害者など福祉サービスを必要としている方々でも当たり前に社会参加している事がまず必要である。それも閉ざされた空間での参加でなく、地域住民誰しもが利用する場所、誰しもが参加し得る行事など、開かれた空間での参加でなければ意味を成さない。ここでの社会参加により、いまだ根強い、障害者や高齢者などに対する施設的な日本の考えに対して、存在をアピールし、存在を受け容れてもらう事がまず必要であり、残念ながら日本はまだまだこの段階にとどまっていると私は感じてしまう。身近に当たり前に福祉サービスを利用している人々が感じられて初めて、本当の意味での地域福祉はスタート出来るのではないか。