社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

高齢者に対する支援と介護保険制度①。

「介護を実践する際、介護者はどのようなことに留意すべきか述べなさい」

A評価。

 

ケアワーカーにとって最も重要な理念は、利用者を尊厳と人権のある唯一の存在としてあるがままに受け止めるという人間観・倫理観である。また、介護実践には、利用者と生活を共有しながらの総合的援助が提供できる、利用者やその家族との信頼関係が形成しやすい、利用者はもちろん、とりまく環境を含めてその状況や変化を把握できるなど、利用者にとって、最も身近な環境で居られるという特性を持っている。この最重要理念と介護実践の特性を十分理解した上でケアワークを行っていくことが心構えとして必要だが、それでは介護の目的とは何なのであろうか。

自立支援。良く聞かれる言葉である。介護保険制度のキャッチフレーズと言っても過言ではない。併せて介護予防という言葉も謳われ、まるで自立できない要介護状態の否定、ひいては依存することの否定とも捉えられかねない。しかし、この自立と依存は決して相反するものではなく、常に誰しもの中で並存しているものである。子供の時には家族に依存し、病気になれば医療機関に依存する。高齢になり家族や介護機関に依存することはそんなに不自然なことであろうか。日常的な自立と依存の割合は違えど、誰しもが完全な自立のもと生活をしているわけではない。「適切な依存」関係を構築していくことが我々ケアワーカーの役割であり、介護の基本目的ではないだろうか。必要な時に必要な支援を行う。その為には、コミュニケーションが最も有効であると考える。

残存機能の維持を建て前に、出来ることは自分で行うべきという考え方があるが、視点を変えてみれば、「頼りにしている」「疲れた」「甘えたい」などのコミュニケーション表現ともとれる。「業務が多忙で利用者とコミュニケーションがとれない」とも良く聞くが、我々が日常生活を送る中で「コミュニケーションの時間」とわざわざ特別な時間を設けているだろうか。介助・支援の実践中こそ個別にコミュニケーションをとるチャンスであり、関係性の構築や、利用者のストレングス、ディマンズやニーズを把握する機会となり、個別ケア実現への第一歩へ繋がると私は考える。

自己決定も大切な概念として挙げられる。アメリカの自立生活運動で生まれた言葉であろうが、この言葉は日本の高齢者を理解しようとすればする程、適していないと私は思う。欲求をはっきりと主張する近代的・アメリカ的な個人には受け入れられるであろうが、奥ゆかしさ、謙虚さを美徳としてきた日本の高齢者には、おおよそ適当ではなく、利用者の表現を推察し、翻訳していく力がワーカーに求められる。本当の意味で自己決定して頂くには、信頼関係を深くしていくこと、ワーカー以外にも家族や友人など翻訳者を多く持ち、増やしていくことなど出来るだけ翻訳の精度を上げ、共同決定を実現していくことがワーカーの役割ではないか。