社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

高齢者に対する支援と介護保険制度②。

「我が国の高齢者介護保障政策に関わる制度の仕組みについて、歴史的展開にそって説明しなさい」

A評価。

 

高齢者福祉を歴史的に見ていくと、近代では生活保護法に基礎を見出すことが出来る。戦後直面していた戦争孤児や戦傷者を対象とした児童福祉法身体障害者福祉法などが整備されていく中で、高齢者に対する福祉は後回しにされ独立した法律は整備されず、経済的救済が目的の生活保護法の下でスタートしていった。実際、当時の寿命や高齢者数を鑑みても、社会的には高齢者福祉は取り立てて問題視する必要もなかった時期なのであろう。しかし、その後の高度経済成長に伴い状況は一変する。高齢期に差しかかる国民のほとんどが、経済的・医療的な不安に直面することとなり、早急な高齢者福祉の必要性が社会の声として叫ばれるようになっていく。1963年に、経済的救済だけの高齢者福祉から脱却し、生きがいや安心・安全、そして敬愛の念も盛り込まれた、老人福祉法が制定され、本格的な高齢者福祉がスタートする。

高度経済成長の下で、老人医療費の無料化も実現したが、高齢者の医療機関受診の激増や、長期入院患者の増加、社会的入院など問題も多くあった。これを受け、1982年には老人保健法が制定され一定額ではあるものの高齢者の自己負担や、公費に加え各医療保険者からの拠出によって支える仕組みが導入された。しかし、より長期化・多様化する高齢期、激化する高齢化の中で、財政破綻を招くと共に、医療現場では介護サービスを十分に提供することが難しく、結果として寝たきりにさせてしまったケースなどが多々見られ、医療だけでない、充実した介護サービスの重要性が議論されるようになっていく。

こうした背景から、医療中心の考えではなく、先進国の北欧に倣い、寝たきりをなくし高齢者の自立を支援しようという、介護を中心に考える介護保険法へと法律も移り変わっていく。高齢者福祉の医療部分は後期高齢者医療制度として、医療保険とは独立した制度により担われることとなる。介護保険制度の財源として、公費50%、残りを40歳から64歳までの第二号被保険者と、65歳以上の第一号被保険者から徴収する仕組みとなっている。また、応益負担制が導入され、福祉の理念の大きな転換とも言える改革も盛り込まれた。

介護保険制度により、家庭内介護として潜在化していた介護ニーズを社会的に掘り起こしたという点では、意味のある役割を果たしたと私は考える。しかし、在宅の推奨と施設の在り方の関係性や多様化など、受け皿となり得る基盤整備が十分でないと感じる。利用者の増加により、待機者が増加するのは目に見えていたことである。そして何よりも、被保険者数の増加よりも圧倒的な勢いで増加し続ける要介護認定者数。今も議論され続けている医療保険と同じ設計図で描かれている制度である。医療保険と同じ道を、より早いスピードでたどっていくのも目に見えていないだろうか。