社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

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現代社会と福祉①。

社会福祉基礎構造改革の背景と特徴を整理し、今後の課題について述べなさい」

A評価。

 

社会福祉基礎構造改革は、直前まで迫ってきた超高齢社会に向け、社会福祉の共通基盤を作り、いち早く国民の不安を払拭し、期待に応えるべく始まったものといえる。

これまでの社会福祉制度は、戦争直後に作られたものを基盤としており、主として低所得階層の人たちのみを対象としていた。しかし、現代の生活スタイルや、多種多様になったニーズにより、全国民が、時には社会福祉を支える立場となり、またある時にはその対象になるという構図ができた。加えて、全世界で「権利」や「人権」の意識が高騰したことも改革を進める要因のひとつに挙げられる。

この改革の大きな要とも言えるのが措置制度の廃止である。日本の福祉の歴史的特徴とも言えるパターナリズム如実に現れた措置制度が廃止され、ほとんどの福祉サービスにおいて利用者と事業者間とで契約を行うこととなった。これは後に支援費制度として確立し、平成18年の障害者自立支援法の成立により廃止されることとなるが(政権交代により、今後どう変わるかは分からないが)、長らく続いてきた措置制度を解体し、利用者の自己決定の尊重、事業者間との対等な関係性の構築、サービスの質の向上に貢献した大きな一歩であるといえる。

質の向上も改革の主目的であり、同時に量的拡大も謳われた。生協や農協、民間企業やNPOまでもが福祉サービスに参入することを可能としたり、福祉教育の充実や、サービス事業の充実・活性化、情報公開や自己評価の実施、第三者評価機関の育成、オンブズマン制の導入など、様々な角度から質的・量的拡大の可能性を探っていった。

上述した点以外にも、脱施設化を論じ、地域での総合的な支援を謳ったいわゆるノーマライゼーションの思想も改革理念として挙げられ、地域福祉計画も策定された。

では、この改革の批判的立場に立ち、問題点と課題を考察してみる。

「措置から契約へ」という言葉の下、措置制度は廃止され、行政はサービスの利用決定から身を引いた形に見える。しかし、費用支給の決定は措置と同様、行政処分であることには変わりなく、費用支給の可否はサービス利用の可否と同義であるのが現実である。また、利用者の自己決定の実現と言えば聞こえは良いが、複雑に細分化されたサービスを取捨選択するという負担は大きい。後に、最低限の生活を送るために必要なサービスの利用を「益」と銘打った、応益負担が導入され、経済的負担も大きなものとなる。政権交代により応能負担に戻されるであろうが、結局、行政主体の制度である以上、日本的パターナリズム福祉からは抜け出せず、利用者とその家族や保護者が抱くスティグマの感情は拭われることはないと私は考えてしまう。構造改革の理念として挙げられている「福祉の文化の創造」に再度国を挙げて一から取り組むことが、今後の重要な課題であると考える。