社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

精神保健の課題と支援①

B+評価。

 

乳幼児期は、運動機能と心理機能それぞれの発達が著しい時期である。運動機能は、首のすわりや始歩などの指標が示されており、環境や文化の影響を受ける事のない、生得的なものが強いとされている。一方、心理機能の発達においては、生得的なもの(遺伝)と環境の双方が大きく影響し合っている。

誕生直後より、養育者との相互の交流が始まる。乳児期は、この交流を通じて、愛着関係を形成し、基本的信頼感を獲得し、不信感を克服する事が発達課題となる。人間の基本的な欲求のひとつである信頼の感覚を身に付ける事は、今後における全ての人間関係の基礎となり、非常に重要な課題と言える。

幼児期に差し掛かると、「自律性」対「恥・疑惑」という発達課題が挙げられる。身の回りの事を自分で行いながら、社会のルールや秩序を守る事が求められ、様々な試行錯誤を通じて、養育者との一体感から分化し、心理的な「分離個体化」を経験していく。多くの行動を自身で律する事により、自信が増し、自律性や独立心の源泉が育まれる。逆に養育者の介入が過ぎると、新しい事への不安が生じやすく回避的になってしまう。

さらに、幼児期は、保育園や幼稚園などの入園により、最初の集団生活を体験する時期である。家庭という場でなく、養育者以外の大人や、同年齢の子どもがいる集団の場の中で、同輩と社会的な関係を築いたり、遊びを通じて自発性や積極性を養ったり、自分の思うようにはならない事から自他の区別がつき、他者配慮や協調性を学んだり、ルールを守る事を通じて、罪悪感が生まれるなど多くの発達が見られる。

乳幼児期の子どもの発達課題としては以上であるが、精神保健の観点で課題を掘り下げると、親の子育てへの無関心や放任、過保護、甘やかせ過ぎ、虐待などといった多様な問題が指摘できる。虐待を含めた親子関係への対策として、望まない妊娠や、未婚の出産など、様々なリスクのある妊娠・出産を減らすための就学前後からの性教育や、性感染症対策を含めた具体的な避妊教育の強化、母子保健法における「乳児家庭全戸訪問事業」の活用による積極的なアウトリーチ、乳幼児健診、児童センター、小児科、近隣住民との協力や通報体制、児童相談所の介入などが挙げられる。

子育ての不安や負担への対応も重要である。日本ではまだまだ母親の負担が格段に大きいのが実情であり、男性の育児休暇取得率の低さに顕著に見られるジェンダーギャップを埋めていく事が大切である。また、身近な地域資源や友人・親族へ適度に依存する事も重要な考え方であり、「閉じられた育児」でない、より良い有意味な刺激を活かせる事にも繋がる。しかし、大都市化、核家族化、少子高齢化により、地域性が薄れてしまい、困難となっている事も課題のひとつとして挙げられよう。地域にとらわれる事のない、広義のコミュニティの形成が重要である。

参考文献

改訂新版・精神保健福祉士養成セミナー

2精神保健学―精神保健の課題と支援

編集:新版・精神保健福祉士養成セミナー

   編集委員会

出版:へるす出版

 

文部科学省ウェブサイト

子どもの徳育に関する懇談会「審議の概要」

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chouch/shotou/053/shiryo/attach/1282770.htm