社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

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精神保健の課題と支援②

日本において高齢化の進行は着実であり、今後も深刻な問題となる事は間違いない。問題の中心を占めるとも言える認知症対策について述べる。

まず重要となるのが、正しく認知症を知るという事である。当事者や家族はもちろん、住民や保健・医療・福祉関係者らも含め、まだまだ正しい認識が持たれているとは言えない状況にある。適切な対応で支援する為にも、知識の普及や啓蒙、教育の拡充が求められる。

相談や情報提供の場として、平成21年より認知症疾患医療センターが全国に配置されている。このセンターが拠点となり、他機関と連携しながら、地域支援や正しい知識の普及を行っていく事が理想的であるが、まだまだ完全に機能しているとは言い難く、今後への期待が寄せられている。

医療面からの観点では、他の疾患と同様に早期発見・早期治療、的確な診断と予防の重要性が挙げられる。認知症は、物忘れやせん妄、うつ病などと間違われ易い事や、「年のせいだから仕方ない」「私に限ってあり得ない」などといった病識の欠如、世間体を気にし受診しないなどを理由に、発見が遅れてしまう事が少なくない。正しい知識を持って、出来るだけ早期に、専門的な方法による診断を受け、早期治療を開始する事が重要である。6割~7割が認知症へ進行すると言われている「軽度認知症(記憶障害が主体であるが、正常と認知症の境界にある状態)」の時点で、予防的に介入し危険因子へアプローチする事が可能になれば、大いに成果を期待出来る。また、認知症疾患の研究は世界的に盛んに行われており、薬剤の開発や危険因子の研究が進展している。今後もさらに解明が進み、危険因子がより明確になれば予防の可能性や精度も高まると期待されている。

認知症高齢者を的確に介護する事もまた重要である。個々人の介護技術の向上はもちろん、パーソンセンタードケアやバリデーションケアなどの概念を介護に取り入れるなど、介護現場への指導も欠かせない。

支援の実践の場としては、医療が中心の病院への入院や、病院から在宅への復帰を目指す老人保健施設認知症に対応した特別養護老人ホームや、養護老人ホームなどに代表される入所施設等があるが、障害者支援同様に、当事者本人の気持ちを優先し、慣れ親しんだ環境で生活を続けるという視点で、地域の中での在宅による支援を目指して行く事が大切である。その実現の為に、在宅ケアサービスの数や質を高め、事業所の枠を越えて、関係職種が連携していく事が求められる。

「障害」「高齢」「児童」などと分化されているが、どの分野も「本人らしさ」が最も大切な要素ではないだろうか。医療・保健・福祉の連携の重要性は何年も前から叫ばれているが、さらには、分野にとらわれず連携し、より柔軟にニーズに応えられるシステムを目指す事が今後の福祉の要だと考えている。

参考文献

改訂新版・精神保健福祉士養成セミナー

2精神保健学―精神保健の課題と支援

編集:新版・精神保健福祉士養成セミナー

   編集委員会

出版:へるす出版