社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

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相談援助の理論と方法③

「相談援助において、ケースマネジメント(ケアマネジメント)が重要視されるようになってきた背景や経緯について述べ、ケースマネジメントの中核技術としてのコーディネーションやネットワーキングにおける、社会福祉士の役割について論じなさい」

 

A評価。

 

 

ケースマネジメントやケアマネジメントという言葉は、日本では「高齢者への個別アプローチ」という認識を深めてきている印象があるが、原点とも言える方法論は、アメリカにおける精神障害を持つ人々へ対する在宅支援、社会生活モデルを基盤としたアプローチに起因している。つまり、ケースマネジメントは、高齢者の終末ケアや生命の維持といった介入ばかりではなく、人生を有意義に生きがいを持って送って頂くことを支援するポジティブな介入が先行しなければならない。

白澤政和は、ケースマネジメントとは、「対象者の社会生活上での複数のニーズを充足させるため適切な社会資源を結びつける手続きの総体」と定義付けている。進む高齢化、高齢期の長期化を受け、高齢者支援としてのケースマネジメントは重要視され、2000年の介護保険制度の実施により明確化されていった。そして障害を持つ人々へ対しても、1981年の国際障害者年を契機に、自立生活が強く叫ばれるようになり、脱施設化やコミュニティケアなどのノーマライゼーションの考え方、そして、冒頭に述べた「生きがいのある、質の高い生活」を目指すべく、ケースマネジメントは重要性を高めていったといえよう。

ケースマネジメントの中での社会福祉士の役割には、コーディネーションとネットワーキングが挙げられる。ケースマネジメントを実践していくためには、「対象者」「社会資源」「ケースマネジャー」の3つの構成要素が不可欠である。2つ目の社会資源とは、地域に存在する全ての物を指し、商店やスーパー、各種専門機関や専門職、ひいてはそこに住む全ての地域住民までをも意味する。この社会資源を対象者のニーズに応じて結び付けることこそがコーディネーションであるが、高齢者支援においてはこのマネジャーの役割は、ケアマネジャーとして資格化されたものの、他の分野では未だ資格は定められていない。さらに、コミュニティケアが重要視されるに従い、地域に散在する社会資源を調整すべくますます重要視されるようになっている。このような現状において社会福祉士のコーディネーターとしての役割は重要である。対象者と社会資源を結びつけるには、適切な社会資源の模索が基本であるが、必要であれば社会資源を創造することも役割として期待される。

そして、このコーディネーションや社会資源の創造は、豊かなネットワーキングによって有効に機能する。ネットワーキングとは、「各種のつながりを形成する過程」を指すが、特に社会福祉分野では、これまでの既成概念や制度内での考え方にとらわれず、予定調和的なつながりを排した、多様化と多元化を促進するネットワーキングが求められており、フォーマル・サポート間の連携だけでなく、インフォーマル・サポートとの連携や、セルフヘルプグループとの連携など、総合的に地域福祉を推進するためのネットワークの形成が期待されている。

(1)白澤政和「ケースマネジメントの理論と実際ー生活を支える援助システム」1992年11頁