社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

精神保健福祉に関する制度とサービス②

医療観察法以前は、重大な他害行為を行った心神喪失者や心身耗弱者については、措置入院で対応されていた。しかし、必要十分な医療体制を確保する事が困難な上、判断の多くを医師に委ねてしまい、過剰な責任を押し付けてしまう事や、退院後の不十分な仕組み、都道府県を超えた連携の限界など、多くの問題を抱えていた。池田小学校事件を機に、平成15年、医療観察法は施行された。

本制度は、重大な他害行為事件で、心神喪失者または心身耗弱者として不起訴となった者、無罪が確定した者、刑を軽減された者(実刑者は除く)に対し、社会復帰を促進する目的で制定された。保護観察所へも社会復帰調整官が配置され、司法・更生保護の分野でも一層の発展が期待されている。

検察官の申立を受け、裁判官と精神保健審判員により処遇が決定される。その際、対象者の権利擁護の観点から付添人である弁護士を付ける事とされており、必要に応じて精神保健参与員も関与させる事が出来る。事前に対象者は、裁判官の指定する医療機関に入院(最大3週間)し、鑑定入院を実施する。そこでの結果も処遇決定の材料となる。処遇決定後は、厚生労働大臣指定の指定入院医療機関や指定通院医療機関で医療を受ける。尚、医療費は全額国費で支払われる。

入院医療は厚生労働省の定める入院処遇ガイドラインに従って進められ、原則として2年以内とされているが、延長も認められており、6カ月ごとの病院管理者による入院継続の申立てにより決められていく。当然のことながら、指定入院医療機関は、環境やスタッフ配置など一般精神科と比較して格段に充実した体制が整備されている。

次の通院医療は、保護観察所の社会復帰調整官による観察・指導等を受けながら行われる。原則として3年とされているが、裁判所の判断で2年間までの延長も認められる。処遇対象者又は保護者、保護観察所長からの申立てを受け、裁判所が終了を決定するが、保護観察所長の申立てにより、入院処遇、再入院処遇が決定される事もある。

本制度における課題は、現時点で多く指摘されている。指定入院医療機関に比べ、指定通院医療機関や一般精神科の水準に大きな格差がある事や、キーとなり得る福祉専門職の価値と、司法分野の価値に矛盾が生じ易い事などが挙げられており、本制度の両輪と言える、精神医療と精神保健福祉双方全般の水準の向上が求められている。また、制度自体に未整備な事項も多く、入院・通院の機能分化、鑑定基準、大多数が急性期である中での鑑定入院中の治療、保護観察所と他関係機関との責任や権限の所在、地域処遇終了のあり方など多くの面での整備が急がれている。さらには、数少ない指定通院医療機関により、特定の地域に居住が限定されてしまう事による地域からの偏見や無理解も問題であり、国民全体への理解促進も大きな課題と言える。

参考文献

改訂新版・精神保健福祉士養成セミナー

精神障害者の生活支援

「制度・システムとサービス」

編集:新版・精神保健福祉士養成セミナー

   編集委員会

出版:へるす出版

 

平成26年7月13日スクーリング資料