社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

私が書いたレポートを公開してみます。新科目には対応しておりません。

精神疾患とその治療②

B評価。

 

精神疾患に対する治療は、身体療法、精神療法、環境・社会療法の3つに大別できる。身体療法は、投薬や電気ショックなど、医師が行う医学モデルであるが、一方で精神療法、環境・社会療法は医師以外でも多くの人間により実施可能な人文科学的、文化的な社会モデルと言える。精神疾患の多くは、ICFの生活機能構造モデルに表されている通り、環境や社会の因子に大きく左右されると考えると、この精神療法及び環境・社会療法の重要性が深く理解出来る。

精神療法には、深層心理学、行動理論、人間性心理学の3つの潮流が挙げられるが、どれも認知、情緒、行動に対してアプローチしていく点では共通している。深層心理学を用いた療法では、無意識を探り症状を和らげることを目的とした、フロイト精神分析療法が代表的である。行動理論に基づいた療法は、「現代学習理論の法則に基づいた有効な方法によって、人間の行動や情動を変える試み」と定義される、ベックによる認知療法認知行動療法、パブロフによる行動療法が著名であり、先に述べた精神分析とは対置する形で発展している。人間性心理学よる療法は、ロジャースによる「非支持的カウンセリング」や「クライエントセンタードカウンセリング」を礎に発展してきたもので、現在ではカウンセラー、クライエント双方のパーソナリティを尊重した「パーソンセンタードカウンセリング」が主流となっている。三大潮流のみを述べたが、精神療法は実に様々な手法があり、個人だけでなく、夫婦や家族、集団や社会全体を活用したものも多くあり、対象者の症状や状態に応じたものが活用されている。

次に、環境・社会療法について述べる。この療法は、変えられる環境は治療的なものに変えていくように活動するとともに、変えられない環境変化に対しては、個々人の対処能力を高める活動に取り組んでいく療法である。具体的なものに、日常生活の中で行う、生活療法がある。日常生活機能の回復を目指す生活指導、作業を通じて仕事の喜びや人間関係構築に働きかける作業療法、スポーツやゲームなど様々な活動の中で、緊張や葛藤を開放するレクリエーション療法の3つであり、「平均的な日常生活を準拠として、そこへ患者を近づけようと思い立ち、その努力の中に治療的契機を求めようとするもの」とされている。また、病院内やデイケアのメンバー全員が参加するコミュニティミーティングを通じて、治療共同体の理念を育む集団精神療法や、対人スキルの向上や地域生活への適応力を高める社会生活技能訓練も環境・社会療法の代表的なものである。

以上、各種療法について述べてきたが、全てにおいて重要なことは対象者への支持的態度と周囲の理解であり、こころのバリアフリー化が要である。治療の第一歩であるとともに、現代で失われつつある地域社会コミュニティの再構築の第一歩だと私は考える。

参考文献

改訂新版・精神保健福祉士養成セミナー

1精神医学「精神疾患とその治療」

編集:新版・精神保健福祉士養成セミナー

   編集委員会

出版:へるす出版

 

好きになる精神医学

著:越野好文 志野靖史

出版:講談社サイエンティフィク

 

新・社会福祉士養成講座

2心理学理論と心理的支援

編集:社会福祉士養成講座編集委員会

出版:中央法規出版