社会福祉士・精神保健福祉士科目レポート

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社会調査の基礎。

「質的調査の特徴を簡潔に述べて、質的調査におけるデータの妥当性確保の方法を具体的な事例を挙げて述べよ」

B評価。

 

大量のデータを取り、社会や対象の全体像を把握しようという量的調査とは異なる質的調査とは、数字には還元しない言語で記述されたデータ(質的データ)を通じて対象を調査しようとする方法である。

調査の方法は、アンケートやインタビュー、会話分析、参与観察など多岐に渡るが、最も特徴的なことは、対象者と直接的に関わることが出来るという部分である。多くの量的調査で見られるような、調査者側で意図的に用意した項目にチェックしていくという方法からは得ることができない、対象からの生の言葉や行動をデータ化することが可能である。しかし一方で、質問内容が調査者の主観に左右されてしまうことや、対象が自分の本音を語れず、むしろ調査者の意図に沿うよう気を使っていたり、自分の記憶を都合よく再構築していたりと、必ずしも対象者の本音を引き出せているとは限らない。また、回答者の意見を調査者が誤解しているなど、生の言葉や行動をデータ化する上で十分に気を配らなければならない部分が多いのも事実である。量的調査とは違い巨大な社会のごく一部しか調査することができないのも事実で、調査者の行きやすい場所や、調査に応じる時間や余裕のある恵まれた社会階層など、社会の中の限られた一部分の人々からデータを取るのみに終わってしまうという問題も指摘されることが多い為、質的調査に適したテーマの設定や、フィールド・対象の選定など十分な配慮が必要である。

テーマ、フィールド、対象の選定を終え、調査を開始・分析を行っていく上で、データの妥当性を確保していかなければならない。

熟練の研究者や教授などが調査・分析を行えば、妥当性は確保されていると言えるのであろうか。調査の技術的手法や方法、インタビュー技法、または調査者と対象者との関係構築など、調査時に妥当性を左右する要因はあるにせよ、分析時はどうなのであろうか。

分析(解釈)そのものが調査者の主観で行われる質的調査において、恣意性を完全に排除することは不可能である。しかし、低減させる(妥当性を高める)ことは可能であると考える。妥当性を高めるとは、信用性の形成とも言えるであろう。具体的には、対象者とのメンバーチェックや、同僚・スーパーバイザーとの議論を通じたピアチェックなどで、調査者自身はもちろん、他の調査者、さらには対象者を含む、フィールドに関与している全ての人々から調査結果の受容・納得を得ることで信用性は形成されていき、妥当性は高められていく。

代表的な分析方法であるグラウンデッドセオリーやKJ法などを用いるにせよ、インタビュー等でリッチなデータを収集し、それをコーディング、結合、図解化、文章化していく一連のプロセスを明示し、誰もが納得できるような結果と考察を提示することで信頼性と妥当性を確保できるようになるのである。